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有限会社 金文堂信濃屋書店
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おすすめ本

説明書き

ここに紹介している書籍は基本的に読んだものです。従いましてある本を紹介するならその本を読破しなければ紹介いたしませんので更新頻度は大変遅いものとなります。また、内容につきましては個人的な主観が入りますので実際とは異なる可能性もあります。
 
なお、ここで紹介する本につきましてはそのジャンルは個人的な好みが入りますのでやはり偏りが生じます。
 
以上の点をご了承くださいますようよろしくお願いいたします。

田中ひかる「生理用品の社会史」

40年間お待たせしました!

 私が物心ついたときには生理用品であるナプキンはすでに、ほとんどの日本の女性たちにとって身近な存在でした。私にとってももちろんそうです。現代ではナプキンやタンポンといった生理用品が、スーパー、ドラッグストア、コンビニなど、ありとあらゆる場所で手に入ります。そんな生理用品は、私にとってまさに「いつでもどこでも手に入る。それが当たり前」な存在だったのです。
  

しかし近年、被災地などで生理用品の需要に関する問題を耳にしたり、映画「パッドマン」を視聴したことで、その当たり前は非常に有り難いものなのだと痛感しました。それと同時にふと、では今日の生理用品がなかった時代、女性たちは毎月やってくる月経とどう付き合っていたのだろうか?という疑問が起こります。今や世界と比べてもその品質の高さを誇る日本の生理用品が、いったいどのような経緯で誕生し、どのように進化していったのか?その変遷をたどる一冊を求めていたところ見つけたのが本書です。 

 

本書は四章に分かれて構成されており、第一章では「ナプキンがなかった時代の経血処理」、第二章では「生理用品の進化を阻んだ月経不浄視」、第三章は「生理用品が変えた月経観」、第四章は「今日の生理用品」となっています。

  

人類誕生以来、多くの女性には月経があったと思われますが、ナプキンが誕生したのはたった50年前の話です。その理由は、まさに第二章のテーマにもなっている「月経不浄視」。生理用品の歴史について語るうえで外せないキーワードです。残念ながら現代にも、「伝統」という美名のもと、「女性(月経)=穢れ、不浄」という価値観は脈々と受け継がれ、今日にも堂々と存在していますが、多くの現代人は、恐らく女性の月経に対して、そこまで忌避すべきものという感覚は持ち合わせていないのではないでしょうか。50年前には一般の人々の間でもあからさまに語られていたという「月経=不浄」説ですが、その月経に対する陰惨な印象を変えたのも、まさに生理用品であることが第三章で説明されています。

  

今や身近な存在となり、日々私たち女性の暮らしを支えてくれている生理用品。今も進化を続け、布ナプキン、ナプキンのいらない吸水型サニタリーショーツ、タンポン、月経カップなど、今や清潔さのみならず、快適さの追求や、環境問題にも配慮した生理用品を生み出そうと様々なものが出ています。また、生理用品(ここではナプキンを指します)の恩恵を受けているのは女性だけではありません。その技術が介護用のおむつにも活用されていたり、病気などの影響で下着を汚してしまう恐れがある方が利用していたりと、その活躍の幅は思ったよりも広いことがわかります。そして今もなお進化を続ける生理用品の原点を、ぜひ振り返ってみてはいかがでしょうか。

田村由美「ミステリと言う勿れ」

整の語りに多くの気づきをもらえる話題のマンガ

「今日はカレー日和だ」
ある冬の日、一人暮らしの大学生 久能整(くのう ととのう)が自宅でカレーを作っていると、突然警察官がやってきて身に覚えのない殺人の容疑をかけられてしまう…。そんな衝撃的な場面から物語は始まります。
 
警察署で事情聴取を受けるうち、身に覚えがないにも関わらず決定的な証拠が次々と見つかっていく絶対的なピンチの中、類稀なる記憶力、観察力、考察力を持つ整は、警察署から一歩も出ることなく事件の真犯人を突き止めてしまいます。その後も様々な事件に巻き込まれていく整。しかし、第一話で見せた圧倒的な考察力でもってそれら事件の真相を明らかにしていきます。
 
彼が巻き込まれる不気味な事件の数々。その不気味さは不思議なことに真相に近づけば近づくほど増していきます。しかし、これほどまでにミステリの様相を呈しているにも関わらず、タイトルは「ミステリと言う勿れ」なのです。謎多き不気味な事件も、整は冷静に事実のみを取り出し、整然と並べたて、分析し、語って語って語りまくって理路整然と謎を解いていく。その様は、まさに「ミステリと言う勿れ」です。
 
さて、本書の魅力は、本格ミステリや種明かしの爽快感もさることながら、事件とはあまり関わりがない部分にもあります。
例えば、殺人の容疑をかけられた中で、事情聴取を受けながら刑事たちの悩みをずばり言い当てる整。その悩みに対する彼の「語り」は、事情聴取しているはずの刑事たちに強く響きます。この「語り」は、作中の刑事たちのみならず読んでいる私たちの胸にも響くようなもので、逆にずっと抱えていたモヤモヤを整がバッサリと言い放つセリフ・場面に、思わず首がもげそうなほど頷いたり「それな!」と声が出ていることも。
 
実をいうと私が本書を知ったきっかけも、本筋のミステリではなく、そんな場面をSNS上で見たことでした。そんな魅力たっぷりのコミック「ミステリと言う勿れ」。現在5巻まで出ております。
月刊Flowersでも連載中とのことですので、ぜひ一度お手に取ってみてください。(ちなみに私はあまりの面白さに1~5巻まで一気に買ってしまいました…)

前田健太郎「女性のいない民主主義」

これまでの政治学にジェンダーという視点を用いてメスを入れる

ジェンダーギャップ指数2019が発表された2019年12月17日。日本の順位は2017年の114位という結果に対し2018年は110位とわずかな上昇を見せたものの、ここへ来て121位と大きく順位を下げてしまいました。これは先進国の中では最低どころか、調査の対象となった153か国の中でも下位に位置されます。足を引っ張ったのは特に政治分野で、女性議員の割合が低いことが原因のひとつだったようです。
 
では、なぜ日本の女性と政治は結びつきにくいのでしょうか?
本書は、そんな疑問を政治学という学問にジェンダーという視点を導入することで、“日本の女性と政治”の関係を丁寧に説明してくれる一冊です。
 
著者は東京大学で政治学を教える前田健太郎氏。各項目のはじめには、まず政治学における基本の概念をわかりやすく解説し、それを踏まえた上でジェンダーの視点からその概念を改めて見つめ直す、といった構成になっています。そうすると見えてくる、“日本の民主主義の姿”や“日本の政治と女性の関係”。それは今までよりもっと、残酷なほど鮮明に。そしてそれらは、私たちが思い描いていたものとは違う姿をしているかもしれません。
 
なぜ世界各国で女性議員の増加が望まれるのか?なぜ民主主義に“女性がいない”のか?
これからの日本の政治や民主主義としての在り方を考えたときに解決すべき課題は何か?
それらの疑問の解決のヒントが詰まった1冊でした。ぜひご一読ください。

牟田和恵『部長、その恋愛はセクハラです!』

「セクハラ」とは何なのか

 メディアやニュースでセクハラが取り沙汰されて久しい昨今、「女の子に何かしようとするとすぐセクハラだよ。何もできない。」なんて言う声もあるかもしれません。しかしながら男性の皆さん、セクハラって何なのかちゃんと説明できますでしょうか。
・・・私も男性ですが説明出来ませんでした。この本を読む前はセクハラというものに対して漠然と「会社の上司とかが部下の女性を不快にさせること」というぐらいしか認識はありませんでしたが本書を読んでハッキリとわかるようになりました。「なんでもセクハラ」という前にまず知ろうとしましょう。
 
 大丈夫です。この本は読みやすいのですぐ読み終えます。各章の末尾にその章のまとめも用意してくれておりますので、そこを読むだけでも結構わかります。
 
 内容はいくつかの実例を挙げながら男性がセクハラをしないために何にどのように気を付けたらいいのかがとても分かりやすく書かれております。誰かの上司にあたる方にとっては必読書ともいえるのではないでしょうか。
 詳しい内容はお求めになってお読みいただければと思いますが、この本を読んでわかることの一つは、本人たちが意識するしないに関わらず、権力や立場において上下関係の存在している恋愛はセクハラの可能性が高いということです。公私混同はやめた方がよい、ということでもあるかと思います。
 
 発行所:集英社 発行年月日:2013.6.19 定価:740+税

ジャッキーフレミング「THE TROUBLE WITH WOMEN “問題だらけの女性たち”」

笑うに笑えない 19世紀の「大問題」な女性観

“かつて世界には女性が存在していませんでした。
 だから歴史の授業で女性の偉人について習わないのです。
 男性は存在し、その多くが天才でした。“
 
この衝撃的な1ページから始まるこの絵本は、19世紀ヴィクトリア朝当時に蔓延していた女性蔑視の風潮や、女性へ偏見を抱く男性を、皮肉とユーモアたっぷりに描いた一冊です。本書は、その洗練されたユーモアで読者を愉快な気分にさせると同時に、痛烈な皮肉をもって、差別を行ったり他人に対して偏見を持つことの滑稽さを教えてくれます。
 
「女性は貞操を失う恐れがあるため、馬、らくだ、自転車に乗る際、横乗りをしなくてはいけない」「科学を学ぶ女性は髭が生える」「髪を横わけにする、自分の意見を持つ、思うだけにとどまらずはっきりと口に出す、出産して処女じゃなくなる女性は堕落している。」
 
現代でこのようなことを口にしたら、驚かれるか、何の冗談かと思われるでしょうが、当時天才であった男性たちはこれらを本気で信じていました。それが殊更に滑稽なのですが、偏見を持ったり差別を行うということは、こういうことなのだと気づかされます。
 
そして残念ながら、この「女性蔑視」の問題は過去のものなどではなく、1世紀の時が経った現代社会でも大きな問題のひとつです。一見、男女平等が成ったような日本でも、まだまだこの誤解だらけの女性説が力を持っています。そして、それを自覚し改められない限り、私たちはこの本の中の滑稽な男性たちと何ら変わららないのです。他人を笑っていると思いきや、その他人と自分は大して差はなく、実は自分自身のことを笑っていたというのは、笑えない話です。
 
「笑うに笑えない女性観」をテーマに、まさに笑ったり笑えなかったりする不思議な魅力を放つこの絵本。ジャッキーによるイラストもとてもチャーミングで本書の魅力を際立たせています。男性にも女性にも、笑いながらでも、真剣に語り合いながらでも、目を通していただきたい1冊です。
 
発行所:河出書房新社 発行:2018/3/22 定価:1200+税 頁:128

姫野カオルコ『彼女は頭が悪いから』

これは彼女と彼らの、そして私たちの物語である。

本書は2016年に実際に起こった“男子東大生による強制わいせつ事件”をモデルに描かれたフィクションです。
 
横浜市郊外のごくふつうの家庭に生まれ育ったごくふつうの女性・神立美咲と、渋谷区広尾のエリート家庭に生まれ育ち東京大学に通う男性・竹内つばさ。
物語はこの2人を柱にして、2人が中学生の頃の2008年から始まり、つばさを含む男子東大生たちが事件を起こし逮捕される2016年までの8年間を描いています。
 
本書はその大部分が、つばさと美咲を中心とした登場人物たちの日常風景や他愛のないやりとりの描写で占められています。その中でも特に注目すべきは、のちに事件の加害者となる竹内つばさのパートです。
 
つばさのパートでは、人には誰にでもある「妬み」や「劣等感」といったネガティブな感情や、「格差意識」「選民意識」などの差別心や歪みを、より強く抱いている登場人物たちが現れます。そんな彼らの中の強烈な認知の歪みが事実をも歪ませ、この事件を「起こるべくして起こったもの」にしていくのです。
 
そして、その歪みは特別な人間だけにあるものではない、ということも本書は描いています。被害者である神立美咲の事件後の様子からもそれは明らかで、なぜ被害者の女性の方が非難を受けるのか?という問題を、作中の登場人物たちを通して、私たち社会に生きる全員が今一度、自身の歪みについて客観的に見つめ直す必要があるのではないかと考えさせられる1冊でした。
 
「私は東大生の将来をダメにした勘違い女なの?」
本書を読み終えたとき、読者は問いかけられるのです。
 
発行所:文藝春秋  発行:2018/7/21  定価:1750+税  頁:473

石破茂・弘兼憲史「どうする?どうなる?ニッポンの大問題」

「誰かがやってくれる」は、もう通用しない。

 
日本の政治家・石破茂氏と、『島耕作』シリーズの著者・弘兼憲史氏との対談をまとめた本書。現代に生まれ、現代に生きていく私たちが真剣に向き合わなければならない『ニッポンの大問題』について、お二方が語り合った内容をまとめた1冊です。
 
『超高齢化社会』や『少子化』といった、もはや聞かない日などないほどあちこちで叫ばれている問題についても、深刻化すると日本がどうなってしまうのか?そしてそうならないために、現代に生まれ、現代に生き、そしてこれからも生きていく私たちが、どう努力をしていくべきなのか――そのことについて、考えさせられる1冊でした。
 
今、その魅力が世界的にも注目されている日本。
そんな素晴らしい国ですが、本書を読んでからは、その国が遠くない未来に消滅してしまう危機感を覚えています。
 
本書では、いわゆる激動の日本を生き抜いてきた『高齢者』と呼ばれる世代の方々と、これからの日本を支えていく『若者』とにスポットライトを当てています。日本をより良くする鍵は、この両者にかかっていると言っても過言ではありません。
そんな方々にぜひ、この危機感を共有していただきたい。そんな1冊でした。
 
発行所:ワニブックス 発行:2017/9/15 定価:1296+税 頁:222

前野ウルド浩太郎「バッタを倒しにアフリカへ」

日本のバッタ博士、アフリカへ飛ぶ。

「バッタに食べられたい」
そんな強烈な夢を抱き、バッタを研究しすぎてバッタアレルギーにまでなった著者が、
アフリカ・モーリタニアでのバッタ被害を食い止め、それと同時に、自身の昆虫学者になるという夢を叶えるため、苦難の道を進み始めた“序章”の物語。
 
日本でバッタといえば、時々見かけては「子どもの頃はよく捕まえたなあ」なんて童心に返らせてくれる昆虫ですが、国が違えば、空を覆うほどの大群で現れ、農作物や緑を食い荒らす「害虫」であり、もはや「天災」といっても過言ではないほど深刻な問題なのです。
 
本書の読みどころは大きく分けて2つ。
1つは、そんなバッタ被害に長年悩まされているアフリカ・モーリタニアの地に赴き、その被害を食い止めようと悪戦苦闘する著者、そしてそれを支えてくれる現地の仲間たちとの冒険譚。
2つめは、日本では依然として厳しい「学者への道」を、がむしゃらに突っ走り、時につまずき、転げまわり、それでも必死に「昆虫学者になる」という夢に食らいつこうとする著者の活動記です。
 
笑えて、泣けて、人生のどん底が著者の足首を掴んでも、たくさんの人々に救われ、決して折れない著者の姿勢に、励まされたり、応援したくなったり、はたまたバッタの面白さに心打たれる1冊でした。まるでRPGゲームや、ファンタジー映画を見ているようなワクワク感。こんなに夢中になって読んだ本は久しぶりかもしれません。今、イチオシです。
 
発行所:光文社 発行:2017/5/17 定価:920+税 頁:378

監修:山本博文 「こんなに変わった!日本史教科書」

慣れ親しんだ日本史の新事実

日本の歴史を「古代史・中世史・近代史・近現代史」と大まかに4つに分け、その頃に事実とされていた(私たちが学生時代学んだ)歴史上の定説に、さらなる新事実が浮上していることを紹介する本になっています。
 
その中でも、「鎖国という言葉は消えるのか?」や、「ペリー来航の目当ては日本じゃなかった?」など、馴染み深い歴史の知識に、目から鱗の新事実が次々に飛び出します。

その新事実の数は全部で67項目。新事実の浮上前・後のちがいもわかりやすく、丁寧に解説されています。
 
2020年に迎える教科書改訂の後、本書に記載された内容がどれだけ新しい教科書に載っているのか?本書を読んで、予想し、3年後に答え合わせをするのも面白いかもしれません。
 
出版社:宝島社 発行:2017年6月 定価:800円+税 頁:308

浦賀大変!かわら版にみる黒船来航

遥か昔に受けた授業で教わった「ペリー来航」ですが、わたしの中ではあまり印象的な事件ではありませんでした。ただ「ペリーが浦賀に来て、日本は開国した」という味気ない知識があるだけでした。

しかし、本書を通して「ペリー来航」を振り返ると「かわら版」を通じて知らなかった当時の人々や幕府の様子が垣間見え、印象の薄かった「ペリー来航」の事件がひとつの物語として完成します。黒船来航時の動揺、幕府の対応、人々の行動など、一見脇に逸れたような情報が味気ない知識に血を巡らせたようにも感じました。個人的には非常に読みやすく、面白かったです。

マイディー「ファイナルファンタジーⅩⅣ 光のお父さん」

父と距離を縮めたい息子の、泣けて笑える奮闘記

『ファイナルファンタジーⅩⅣ』は、いわゆるオンラインゲームです。オンラインゲームとは、パソコンをネット回線に繋いで遊ぶゲームで、自宅にいながら世界中の人たちと交流したり、協力したりして遊べるゲームのことです。
 
こういったゲームでは大抵、ゲーム開始時に自分の分身となるキャラクターを作成します。容姿、性別、名前は自由に設定でき、名前も本名ではなくニックネーム的なもので呼び合うことが殆どですので、匿名性が高く、プライバシーをしっかりと保護したまま、安心してネット上で遊ぶことができます。
 
本書は、その高い匿名性を利用し、オンラインゲームを通じて『親孝行』をしようと試みた著者とその仲間たちの奮闘記です。
 
齢60になった父が胃がんの手術をしたことをきっかけに、もっと父と親睦を深めたいと考えた著者ですが、なんとなく照れくさい…。そこで、父と共通の趣味であるゲームを通じて親睦を深めようと考えます。
 
しかし、折角ならと、なんとゲーム上で自らの素性を隠して父に近づき、長い冒険を共にした後に「実は僕はあなたの息子なんです」と告白して、驚かせようと閃いたのです。著者はこの計画を「光のお父さん計画」と名付け、ゲーム内で知り合った仲間たちに協力を仰ぎ、予測不可能な行動に出る父に悪戦苦闘しながら、父を理解し、そして距離を縮めていきます。
 
本書を読んでいると、まるでドッキリの仕掛人になったような、コソコソして、ドキドキして、ニヤニヤしてしまう感覚が味わえます。
 
はたして「光のお父さん計画」は見事成功するのでしょうか?結末は、是非皆さま自身の目で見届けてください。
 
発行所:講談社  発行:2017/3/17  定価:1800+税  頁:288

小池百合子「女子の本懐」

防衛大臣・小池百合子の政治活動日記

著者は、現在東京都知事として注目を集めている小池百合子氏。
 
元防衛大臣としても有名な小池氏の、まさに防衛大臣時代の政治活動やそれにまつわる日々を記した一冊です。元環境大臣だった経験や、それまでの人生の経験や知識をフルに活用し、防衛大臣として、多角的な視点で目の前の問題を解決しようと考える彼女の「政治活動記」。
 
読んでみると、政治の……あるいは、小池百合子氏のイメージがちょっと変わるかもしれません。個人的には、東京都知事としての政治活動記にも注目しております。
 
発行所:文藝春秋  発行:2007/10/17  定価:830+税  頁:254

原由子「娘心にブルースを」

原坊のあの頃から今まで

著者は、サザンオールスターズのメンバーであり、桑田佳祐氏の妻でもある原由子さん。
ファンの方々から「原坊」の愛称で親しまれている彼女らしい、読みやすく親しみやすい文体のエッセイ集で、幼少期からサザンオールスターズのメンバーとして活躍するまでを記した、いわゆる「自伝本」です。
 
夫・桑田佳祐氏との出会いの場面や、人生最大の失敗などを振り返っている部分などは、著者が一流アーティストであることを忘れ、とても茶目っ気のある可愛らしい女性として、微笑ましい印象さえ受けました。彼女の才能のみならず、人柄にも惹かれてしまう……まさに『惚れ直した』一冊です。
 
しかし、残念ながら本書は現在重版未定となっており、手に入りにくい状況のようです。もしもどこかで見かけたら、是非一度お手に取っていただければと思います。
 
発行所:ソニーマガジンズ  発行:1998/10/5  定価:  頁:223

にしのあきひろ「えんとつ町のプペル」

総勢33名のクリエイターが作った1つの「世界」

4000メートルの崖にかこまれ、そとの世界を知らない町がありました。
 
本書はこの一文から始まります。物語の舞台となるのは、冒頭にもあるとおり高い崖に囲まれた町。
町の中のあちこちに煙突が建っていることから「えんとつの町」と呼ばれています。
 
そんな「えんとつの町」のハロウィンの夜。ひょんなことから、町のゴミ捨て場で生まれてしまったゴミ人間。その不気味な見た目と悪臭から、町の人々に忌み嫌われてしまいます。しかし、そんなゴミ人間に臆することなく話しかける少年が一人。名前はルビッチ。ルビッチはゴミ人間に「プペル」と名前をつけ、2人はそれから毎日のように一緒に過ごしました。しかし、あることが原因で、ルビッチはプペルを避けるようになってしまいます。

そんな2人の友情の行く末は?
プペルにとって、そしてルビッチにとってプペルの存在とは?物語の最後、はっと息を呑みました。
 
著者がお笑い芸人であること、総勢30名以上のクリエイター・イラストレーターが手がけ、4年半という長い月日をかけて生まれた作品であること、絵本として作品としての素晴らしさや、全編無料公開など、話題に事欠かない本書ですが、その話題性に負けない一冊になっています。
 
個人的には、書籍版をおすすめいたします。
紙の質感、発色、物語の雰囲気……絵本には、作者の『世界』が閉じ込められていると感じさせてくれた一冊でした。
 
発行所:幻冬舎  発行:2016/10/21  定価:2000+税

中野信子・澤田匡人「正しい恨みの晴らし方」

脳や心理の観点から「恨み」のしくみをひも解く

本書は、人間が抱く『恨み』という感情について心理学・脳科学の視点から解説された一冊です。
 
『恨み』と言うと少し大げさかもしれませんが、それと関係性が深い『妬み・嫉妬・羨み』と言った感情は、誰もが一度は抱くことのある感情のひとつではないでしょうか。個人的には、そんな「誰もが一度は抱く感情」の中でも、特に『妬み・嫉妬・羨み』この3つの感情こそ、最も多くの人が抱くのではないかと考えております。
 
そんな『恨み』……あるいは妬み・嫉妬・羨みの感情が、実は自分を良い方向へ導いてくれる方法があるのはご存知でしたでしょうか?
 
本書に記されているその方法こそが、まさに『正しい恨みの晴らし方』なのです。また、『妬み』と『嫉妬』は同じ意味のように思えますが、似て非なるものであることや、『嫉妬』という感情は、なんと生後半年の赤ちゃんにすら存在するという驚きの研究内容も記されています。また、現代日本で最近よく目にする(もしくは耳にする)『炎上』や『過激なバッシング』なども、上記の3つの感情と深く関係していること。
 
他にも、私たちが普段なんとなく感じている感情のルーツを明確に言葉にされて、妙に腑に落ちたり、日本人の脳内物質に関する意外な研究データなど、面白い情報が多く、個人的にも購入してしまった一冊でした。
 
皆さまも是非、『正しい恨みの晴らし方』を会得してみませんか?
 
発行所:ポプラ社  発行:2015/2/2  定価:780+税  頁:245

桂福丸「怒られ力」

新社会人は打たれてナンボ!

怒られて、嬉しいと思ったことはありますか?
本書の著者は「怒ってもらったことに感謝しよう!」と本書で語っています。
 
私も含め、多くの人が怒られるのは苦手、もしくは嫌だと感じるのではないでしょうか?そうでなくとも「怒られた!やったあ!」と喜んだり「ありがとうございます!」とまでは、中々思えません……。
 
そんな私達には読み進めるのが辛い本書ですが、読めば読むほど自分に足りないものが何なのか教えてくれます。怒られて苦しいとき、怒ってくれた相手に背を向けないために…。怒られた自分に胸を張るために、読み返したいと思う一冊でした。
 
発行所:明治書院  発行:2014/4/24  定価:1200+税  頁:240

山本健太郎「文房具図鑑」

その文具のいい所から悪い所まで最強解説

この書籍、なんと小学校6年生の著者が夏休みの宿題として書いた文房具図鑑なんだとか。
およそ100にも及ぶページの挿絵や文房具のイラスト、使った感想や仕組みなどについて全て手書きです。
 
注目していただきたいのは、シャーペンやボールペンなどのイラストの完成度の高さ。細かいところまで本物に忠実に描かれています。そしてその文房具を実際に使ってみての感想も、消費者ならではの目線を重視した率直な言葉で書かれており、仕組みや構造についての解説・知識は大人顔負け。また着眼点も鋭く、本書で紹介された文具メーカーさんから賞賛の声が多数上がっていました。
 
文房具図鑑の名に違わず、読んでいて思わず「へぇ~!」と言ってしまうこと間違いなし。
そのうえ、所々に小学校6年男子らしい部分も見られ、読んでいて微笑ましい気持ちにさせてくれます。
新生活、文房具の新調をお考えの方は、是非参考になさってみてください。
 今なら、希望売値価格の3兆円から1500円へと、驚きのプライスダウン中ですよ!
 
それでは、失礼いたします。
 
発行所:いろは出版  発行:2016/3/23  定価:1500+税  頁:112

安村敏信

ゆるかわブームがここにも

妖怪と言えば、不気味で恐ろしいといったイメージがつきまといますが、こちらで紹介されている妖怪たちは、なんとも言えないゆるさ・可愛さ。何もわからない状態で開くと、小学生男子の落書き帳かと思ってしまうほどのゆる~い妖怪たちが紹介されています。
 
妖怪とは元々人が考え出したものであり、そうなると当然、数は年々増え続け、その種類も多岐に渡ります。最低でも1500匹もいると言われている妖怪たち。そんな中には、恐ろしいばかりでなく、こういったチャーミングな妖怪がいても不思議ではないのかもしれません。
 
発行所:講談社  発行:2016/6/24  定価:2150+税  頁:192

村田沙耶香「コンビニ人間」

コンビニで渦巻く人間模様

コンビニの4文字を見て、何の気なしにパラパラめくり、気づけば読みやすい文体も相まって、あっという間に読破してしまいました。
 
私が本書を面白いと思ったポイントは大きく分けて2つ。ひとつは物語の舞台となる『コンビニ』の描写が非常に緻密でリアルなこと。それもそのはず、著者の村田沙耶香さんは執筆当時も現役のコンビニ店員だったのです。
 
もうひとつは主人公・恵子と、彼女を取り巻く周囲の人々。古倉恵子は36歳未婚の女性。これまで彼氏なし。就職もせず、大学一年生のときにオープンスタッフとして始めた「スマイルマート日色駅前店」のアルバイトも、気づけば勤続18年目に…。
 
個人的には、結構インパクトのある主人公のプロフィールだと思います。
 
しかし、当の本人である恵子はその経歴になんの疑問も感じません。時々周囲から寄せられる奇異の目やお節介な質問攻めを煩わしく思いながらも、どうにかしようという気は全くないまま、ひたすらにコンビニで働き続けます。
 
そんな恵子の前に、新人アルバイトの「白羽」という男性がやってきます。白羽が現れたことによって、恵子と、今までうまくやっていたと思っていた周囲の人々との間に段々と変化が訪れていくのですが、その辺りが読んでいて一番苦しくもあり、楽しくもある部分でした。
 
色々な人にこの本を読んでいただいて、それぞれご意見やご感想を拝見してみたいと思う一冊です。
 
発行所:文藝春秋  発行:2016/7/27  定価:1300+税  頁:160

新井紀子「ほんとうにいいの?デジタル教科書」

デジタル化への課題は多い

何でもデジタル化されていく昨今。遂に教科書までデジタル化されるとの噂を、最近は(特に)よく耳にします。当店も教科書の販売等に携わっているため、他人事ではありません。
 
一時、当店の従業員の間でも「デジタル教科書は実現可能か?」などの話題が上がり、「そのためには多くの課題をクリアしなければいけないのではないか」といった結果にまとまりました。
 
本書もまた、教科書のデジタル化について「実現を可能にするためにクリアするべき課題」や、「教育という観点において紙とデジタル、どちらの教科書が良いのか?」など、教科書のデジタル化において気になる様々な疑問について解説しています。
 
デジタル教科書を実現するにあたって、一体何が「課題」なのか?
今よりもっと具体的に知りたい方におすすめの一冊となっております。
 
発行所:岩波書店  発行:2012/12/7  定価:560円+税  頁:100未満

須賀しのぶ「紺碧の果てを見よ」

あの頃の浦賀がわかる

物語は、主人公である鷹志(たかし)の妹・雪子(ゆきこ)の手紙から始まります。
話はすぐに彼らの幼少時代へと移るのですが、兄妹が暮らしている町がなんと『浦賀』なのです。
実は、本書に登場する『浦賀』の様子は当店の社長である山本詔一(しょういち)が受けた取材を基にされているのだとか…。昔の浦賀の様子が垣間見え、非常に興味深かったです。
一見すると一冊が分厚いので読破が難しい印象を受けますが、拝読した限りでは、情景が浮かびやすく、かつ読みやすい文章で読書が苦手な方にもおすすめです。
 
また、表紙やタイトルをご覧になって頂きますと分かるように、本書の物語には『海軍』が大きく関わってきます。主人公の父が造船所で働いていることもあり、横須賀海軍工廠や浦賀造船所などの施設、他には『望洋丸』に『五十鈴』など様々な船の名前も登場しますので、上記の文字を見ると胸が躍る方にもおすすめです。
 
発行所:新潮社  発行:2014年12/14  定価:  頁:453

本間洋平『家族ゲーム』

原作とメディア化

4月からドラマでやっていた「家族ゲーム」の原作です。
当たり前ですがドラマと原作は違うわけでして・・・・こちらの原作はあのドラマ版とは違いかなり静かに話が進みます。語り手である「ぼく」による風景や心情の描写がどちらかというと「陰」というか静課だからでしょうか・・・逆に弟視点ならもう少しにぎやかな感じになるのかも・・・。
 
型破りな家庭教師と成績を上げていく弟、サボりがちになる兄・・・・こういった構図はほぼ共通・・・と言いますかおそらくこの構図が『家族ゲーム』のメインなのでしょうが・・・。こうしたその作品をメディア化していく中で変えられない本質のようなものにどうアレンジを加えていくのかがメディア化のポイントとも言えるのでしょうか?ドラマから現代ならではの要素を全部取っ払うと小説になります・・・か?原作は1984年のものですが・・・
 
ちなみに小説の吉本荒野は櫻井翔ではありません。どうイメージしてもそうならないんですよね・・・・。
 
発行所:集英社 定価:450円+税 

竹内薫『99.9%は仮説』

仮説な世界

「実は飛行機の飛ぶ原理って科学的に説明できない・・・」
 そんな導入から入る本書は「我々の生活がいかに仮説の上で成り立っているか」を述べている本です。「仮説」とは科学的に完全に証明されていない説のことです。
 本書によるとこれまで常識だと思っていることも多くは実は仮説であり、それはいくらでも覆るとのことです・・・・。
 「そんなことはない!」と言いたいところですが思い当たることも多々あることと思います。例えば「地球は球体である。」なんて今では当たり前ですが昔は信じられていませんでしたね。地球が回っているなんてこともまた然り。ガリレオの「それでも地球は回っている。」のエピソードを御存じの方もいらっしゃるかと思います。
昔と今では常識は違う、そして今でも常識は変わり続けているかもしれない・・・・常識とは一体何なのか・・・・そういったことを考えさせてくれる本です。こうして考えていくと面白いのは落語の「やかん」という噺ですが・・・・それは置いておいて本書は新書で内容も読みやすいものとなっております。日々の生活において考え方を変えて、新鮮な気分を味わいたい方にお勧め・・・かもしれません。
発行所:光文社  発行:2006年2月  定価:700+消費税

金属が語る日本史

「文系」と「理系」の融合

本書は理系と文系の学問を合わせ持つ「文化財科学」という学問の視点から書かれた本です
 
「文化財科学」とは科学的な手法を用いて得られるデータと文献から得られる情報の双方を合わせて検証する学問です。すなわち、「理系」と「文系」の融合。
 
そういった立場から書かれた本ですので「文系」の方からすればあまりなじみのない言葉も出てきます。しかしながら本書で紹介されている分析対象が銅銭と日本刀、そして鉄砲と歴史好きの方ならば一度は現物を見たことがあると思われる物ですので、それほど抵抗はなく読めるのではないでしょうか。
 
内容は簡単に紹介させていただくと、古代銭貨に使われている金属の成分を分析し、そこから見えてくるものを文献とすり合わせながら考察していたり、刀や鉄砲、そしてその原料となる鉄の製法を文献と科学的手法で分析したりする、といった内容です。
 
特に刀の製法については刀匠の方の協力のもとに検証が進められていく様子が詳細に記されており、これだけでも興味深い内容となっております。
 
「銅銭」「日本刀」「鉄砲」や学問の融合という点に興味がある方はご一読をお勧めします。
 
発行所:吉川弘文館  発行年月:2012年11月 定価:1785円

永沢道雄『江戸・東京が震えた日』

首都を襲った二つの地震―その時人びとは

安政二年(西暦1855年)十月に江戸を襲った「安政の大地震」と大正十二年(西暦1923年)九月にやはり東京を襲った「関東大震災」の二つの大地震について描かれた書籍です。
 
内容は歴史史料に基づくドキュメンタリー風で、大きく「安政の大地震」のパートと「関東大震災」のパートに別れます。
 
「安政の大地震」のパートでは地震直後にも関わらずクヨクヨせず貪欲に情報を求める人々やナマズ絵に見られるような世の中や権力に対する諷刺が紹介されており、「震災直後の惨状」と言うよりは「人々のしたたかさ・強さ」が印象に残ります。
 
「関東大震災」のパートでは「震災直後の惨状」が詳細に描かれており、さらには震災後の朝鮮人虐殺事件や社会主義者殺害事件の様子が描かれており、ある意味で「安政の大地震」のパートとは正反対の印象を受けます。
 
「安政の大地震」と「関東大震災」――この二つの地震の後で人々が見せた様相の違いはどこから来るのか。最後の最後にそのことに触れ、この本は終わっています。
 
「大地震とは何か」と言うことについて学べる、良い書籍だと思います。
 
発行所:潮書房光人社 発行:2012年9月 定価:760円(税込)
 
 
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